1996年10月29日から31日にかけて関東地方に発生した霧(2)  空間的に細かいスケールでの地上気象解析


気象研究所環境・応用気象研究部

山本 哲



  移動性高気圧が日本を通過した1996年10月29日から31日にかけて関東地方の広い範囲で2晩続けて発生した霧について、前報(1997年日本気象学会春季大会)に引き続き、空間的に細かい観測網でデータを収集し、地上気象解析を行った。主な特徴は次のとおりで、気象官署やアメダスなどの資料からだけでは十分把握できなかったものである。

風:夜間、山風が見られ、関東平野の西半分では収束、東半分では発散傾向が認められる。霧の発生域では山風の迂回、淀み、海から吹く風との合流などが解析されることがある(第1図)。

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第1図 1996年10月30日05〜06JSTに霧(視程1km未満)を観測した地点(●印)と06JSTの地上流線。
気温:茨城県中部では夜間の気温低下が早い。東京都、神奈川県の海沿いでは気温が低下しにくい。

相対湿度:消散期を除くと、必ずしも霧の発生域と一対一には対応しない(第2図)。山風に伴って予想される乾燥域の広がりは顕著でない。

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第2図 第1図と同時刻の地上相対湿度分布。単位%。
絶対湿度:日中は低く、日没頃最大となり(第3図)、明け方最低となるが、東京、神奈川海沿いでは夜間に周囲より高い状態が維持される。関東平野の中央部には日中に高い地域が解析される。

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第3図 1996年10月29日18JST(第1図、第2図の12時間前)の地上絶対湿度分布。単位g m-3。
 3次元的構造についても解析を進める。

謝辞 インターネットを通じ多くの一般の方から情報の提供を受けた。WWWを利用したデータ収集について高知大学理学部情報科学科菊地助教授にご協力いただいた。京葉シーバース株式会社、茨城県生活環境部、栃木県衛生環境部、群馬県衛生環境部、高崎市等広域消防組合、太田地区消防組合消防本部、藤岡消防署、埼玉県環境部、千葉県環境部、千葉県水産試験場富津分場、千葉港湾事務所、東京都環境保全局大気保全部・水質保全部、東京都水産試験場、東京都港湾局港湾整備部、神奈川県環境科学センター、横浜市環境保全局、川崎市公害監視センター、横須賀市環境保全部、藤沢市環境部、相模原市環境保全部、日本道路公団東京第二管理局鹿沼・加須・千葉・谷和原・水戸各管理事務所、陸上自衛隊東部方面管制気象隊市ヶ谷・第一・第四各派遣隊、海上自衛隊下総教育航空隊下総航空基地運航隊気象班、航空自衛隊入間・百里各気象隊、国立環境研究所環境情報センター、筑波大学水理実験センター、建設省関東地方建設局利根川ダム統合管理事務所、気象庁観測部統計室、高層気象台、気象大学校、気象研究所気象衛星・観測システム研究部(順不同)から観測データなど貴重な資料の提供を受けた。ここに記して謝意を表する。




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 本ページの内容は1997年10月7日から9日まで札幌市で行われる日本気象学会1997年秋季大会で発表されます。
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